菩薩

パプリカの菩薩のレビュー・感想・評価

パプリカ(2006年製作の映画)
4.4
イマジネーションと現実の融合とをテーマに掲げ作品を作り上げて来た今敏が行き着いた今敏自身の居場所の再認識であり、この先についぞ実現しなかった(今後もしないであろう)「夢見る子供達(機械)」があった事を思えば、改めてその早過ぎる生涯の幕引きを嘆かざるを得ないが、集合的無意識vs個人的無意識の師弟対立構造が散見される中に、同じく師である大友克洋及び押井守に挑まんとする今敏個人の矜持が見受けられるのは、惜しくも遺作となってしまった本作に付与された唯一の救いなのかもしれない。氾濫するAKIRA的、攻殻・イノセンス的イメージを今敏のイマジネーションは全て飲み込み、虚構に浸食された現実は解放され、トラウマに縛られていた男はその全てを受け入れる事により新たな一歩を踏み出す力を得る。映画作家本人による本人の為のセラピー的要素を多分に含みながら、病める現代社会の、それも更に加速と深化しつつある根源的な「闇」の部分に一筋の光を照らす効力は未だに健在であるし、科学に対し勝利する人間らしさと、夢とうつつとのバランス感覚を保ち続ける事こそが最も重要視されるべき事柄である。現実は常に夢を伴い、夢は現実を道連れにする。
菩薩

菩薩