スローモーション男

パプリカのスローモーション男のレビュー・感想・評価

パプリカ(2006年製作の映画)
4.8
 「オセアニアじゃあ常識なんだよ」

 今敏監督の遺作となった映画。
 YouTubeで平沢進の「パレード」と劇中の夢のシーンがめちゃくちゃインパクトがあり、早く観たいと思っていた!

夢を見せる機械「DCミニ」が何者かに盗まれ、他人に精神異常者の夢を見せ暴走させる犯人を見つけ出すためクリエイターと一人の刑事、さらに夢の中の住人まで協力する。

完全にノーランは「インセプション」でパクったでしょうというシーンがかなりありましたが、こちらのほうが世界観が作り込まれている印象。
あちらが論理的で、こちらが感覚的に夢を創造させていると感じました。

この映画は度肝抜く世界観だけではなく、そこに生きる人間もしっかり描いている。特に研究員の敦子と刑事の粉川。
自分自身に向き合わずに、逃げたり避けたりしていたものを克服しようとする。

夢との対立という虚構と現実。それが次第に混合していく。
「嘘から出た真」がかなり響いてくる。
難解ながらも、答えを出して感動も与えてくれるこの映画は脱帽です。


さて、これで今敏監督の映画をすべて観ました。
私は監督が亡くなっていることを知り、本当に残念です。日本のアニメクリエイターのなかでも最強の1人なのに…。
彼の映画には現実と虚構に惑わされる登場人物が多くいますが、最後には乗り越え本当の自分になります。
今監督の映画にもそのエネルギーが宿っており、亡くなってもなお現実の人々に感動を与えている。

今後も、今敏という偉人は社会に影響を与えます。
もっともっと作品を鑑賞していきたいです!