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母なる証明のuuukyeeのレビュー・感想・評価

母なる証明(2009年製作の映画)
4.6
考えるほどに心がおれる映画です笑。

元々、愛情には”善悪”といった異なる尺度なんて存在しないと思っていました。仮定的にではありますが。てか、正直そういった課題に対しては全くもってのinnocenceでありました。
しかしこの映画はそんな”至上の愛”について、痛いほどリアリティーな箇所をついてきて問題提起をしています。

”愛”とは”善”であると定義が出来て、”善”は社会的に支持された規範としての”道徳”である、と定義付けが出来ます。”道徳”の質が高いほど、より良いものとして物事を見極めるのが現代社会の体制です。
しかしこの道徳の質には人それぞれによって全くの相違があります。”善”の隔たりが何処まで行っても曖昧である以上、自分が容認している範囲までは何でも好き勝手やって良いでしょ?だって”善”だから。といった”自治”の論理は、時間が増す毎にどんどん歯止めが効かなくなっていってしまうものです。
そこで必要なのが法の介入です。これによって社会は”道徳”に強制力を加えます。時には文化や歴史から合理的な解釈を用いて、自治の枠組みからはみ出ないように。

この映画の恐ろしいところは、息子のために好き勝手やる母親ではなくて、勿論その姿からも狂気を感じますが、その行動を突き動かすものが”善”の判断から自治の範囲を完全に突き抜け、”愛”として衝動になってしまっている部分だと個人的に思います。つまり、”愛が地球を救う”のか?本当に?といったところ。愛=道徳?善?といったところです。

まとめます。本作は世間一般で絶対的な”善”である母性について、”悪”の部分を容赦なく炙り出していて、且つその内容だけでなく、全体的な湿りのある雰囲気、脆弱な人間関係、閉鎖的なコミュニティに見える田舎町の時代錯誤等々、幻想的な闇を感じとる事が出来る映像が、社会派サスペンスとしてとても洗礼されていました。

人が良いと言ったものは良い。ダメと言ったらダメ。な、ぼくたちナイーブにっぽんじんが観ておいて損はない作品だと思いました。
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