このレビューはネタバレを含みます
映画が始まって少女(サチ)が最初に発する言葉「馬鹿、死ね」。息を吸うように覚えた言葉をただ話している。序盤から心掴まれる場面。
地獄のような環境で過ごすサチ、過去の贖罪をするために生きている安田……。二人の旅路はどこまでも静かだ。お互いの心に欠落したものを埋め合うかのように、少女と老人は自然の中へと溶け合っていく。
「抱きしめられたことない人間に抱けって言われたって無理。私はね、親に育てられたことと同じことをしとるだけ」
やけに説明口調な母親の台詞。劇中の人間たちは皆、追い詰められている。その解決策を見出すわけでもなく、とことん寄り添うわけでもない。一歩離れた距離から痛みを抱えた人間達をひたすら映す、静寂と一時の夢に包まれた映画。