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遊星からの物体XのEikeのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
4.0
いわずと知れた「B級ホラーの巨匠」カーペンター監督。
かつてのC・イーストウッド同様、カーペンター監督に対する評価は本国アメリカよりもヨーロッパで高い状況が続いておりました。
しかし時代は変わって今やカーペンター監督の影響を受けた作品、クリエイターは本当に多いですね。

「要塞警察」や「ザ・フォッグ」のリメイク、そして「ハロウィン」のリブート作が既に公開済みですが、本作「遊星からの物体X」も然り。
これはいかにカーペンター印の作品のオリジナリティが評価されているかを示しているのだと思います。
ただ、そうした多くのリメイクが結局のところ、デジタル技術を使って、より“洗練された”作品にするだけに留まっているのは残念です。

今やクラシックとも言えるSFホラーであるこの作品をロードショー時に初めて見た時にはロブ・ボッティンによる“特撮ショー”としての側面が強すぎてドラマ部分が少し霞んでしまっていると感じました。

とは言え、あらためて見直してみると何気ない風景描写に異様な緊張感が漂っていたり、閉鎖空間の中での複雑な人の配置や動きをスムーズに見せる辺りはさすがのカーペンター節で、けっして特撮・特殊メークを見せるだけの作品にはなっていないのはやっぱりお見事です。
簡単にいえばやっぱり実に映画らしくって面白いのだ。

良く知られている通り、本作は1982年の公開当時には興行的に振るわず、批評家筋からも厳しい意見が寄せられました。
当時はスピルバーグのE.T.が記録破りのヒットを飛ばしていた訳です。
(ちなみに本作と同じ日に公開されたのが「ブレードランナー」で、こちらも興行的には失敗とされたのですね…。)

ジョン・カーペンターは「フィルム・メーカー」であり、客の見たがっている映像や、ウケのいい物語を提供することだけが映画づくりだとは思っていないことは本作のラストを見ても明らかですね。
この「気骨」と「映画作家としてのプライド」こそ同監督の作品が今も語り継がれ愛されている理由だと思います。
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