Keigo

遊星からの物体XのKeigoのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
4.2
スピルバーグ→溝口→ゴダールのルーティンがマンネリする前に、適度に他のも挟んどこう思いまして。もったいぶらずに初めましての監督の作品もガンガン観ていこうキャンペーン実施中。お初のジョン・カーペンター監督。ずっと気になってはいた作品、『遊星からの物体X』。

まずタイトルがいいじゃない。
原題を訳すだけかもしくはカタカナ読みするだけの邦題を除いて、原題から意訳されていたりまるっきり改題されている邦題の中ではダントツにいいと思う。しょーもない邦題に憤ることの方が多いから、原題より邦題の方がいいと思うことなんて珍しい。
どうやらこの作品より前に『遊星よりの物体X』という作品があるらしいので、必ずしも今作の邦題を付けた人のお手柄というわけではないのかもしれないけど、それでも「よりの」より「からの」の方がいいもんな、響きとして。邦題が作品の世界観の底上げに一役買っている稀有な例なのでは。

そしてあのハスキー犬の演技力よ。たまげたな。是非アカデミー助演犬優賞を差し上げたい。調べてみるとわりと実力派の俳優犬らしい。檻に入れられて壁を見つめてる時とか、すごかったなー。愛おしい...

あとこれはもう観た人全員が思うところだろうけど、やっぱり物体Xの、クリーチャーの造形がとにかく素晴らしかった。あのヌルヌル感、テカテカ感、グチョグチョ感...

今ではあーいうヴィジュアルって特に真新しさはなくて、映画に限らずマンガでもゲームでも今まで度々目にしてきた気がするけど、もしかして今作がこの手のヴィジュアルの走りなのかな?それとももっと前に源流となるものがあるんだろうか。そこら辺は分からんけど、何にせよそれだけでお腹いっぱいになるぐらいの完成度。純粋に創作物としてすごい。

この前インスタかなんかでふと流れてきた映像で、タコが海底を移動しながら砂とか岩とかに擬態して色を変える映像があって、それ見ながらやっぱりタコって気持ち悪いなーと思ったけど、人間はどうして骨が無くてクネクネしてテカテカしてヌルヌルしたものを気持ち悪いと思うんだろう。やっぱり生物の作りとして人間とほど遠いからなんだろうか。タコなんて特別毒があるとか、天敵になるほどでもないのに、やっぱ気持ち悪いもんなー。でも見ちゃう。

話しが若干逸れたけど、クリーチャーの造形だけじゃなくて人間同士の疑心暗鬼が増幅していくよう筋書きもかなり良くてその部分でも楽しめたし、全体的にとにかく怖がらせてやろうみたいなガツガツ感が無くてわりと淡々とした雰囲気だったのも良かった。クリーチャーには1ミリも感情移入しないから思いっきり焼いてくれるとそれはそれで不思議な爽快感があるし、爆発もド派手で極寒の南極と燃え上がる炎のコントラストがいい。そしてラストのあの終わり方もとてもいい。

この手の作品は基本的にあまり好みのジャンルではないけれど、総じて今作はとても楽しかったし好きでした!にじゅうまる!◎
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