バテラ

遊星からの物体Xのバテラのネタバレレビュー・内容・結末

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

SFホラーの傑作の本作。生物に同化、なりすまし、勢力を拡大する謎の物体Xを描いている。
南極観測隊の基地という閉鎖空間で、誰が物体Xに乗っ取られてるか、分からない状況で隊員たちは疑心暗鬼に陥っていく。非常にソリッドな作品で、恐怖感はバッチリだ。

しかしなぜこんなに怖いのか?そこにこそ作品の肝がある様に思う。この映画では、主人公=自分がXに乗っ取られるかも?という恐怖感は薄い。徹底して「他者」が乗っ取られているかもしれない恐怖が描かれている。この「他者」が恐怖の肝だと思う。

人は自分以外の本心は決してわからない。しかし「他者」は確かに存在し、その本心を理解する手段はない。例えば表面上は仲の良かった人が、裏では自分の陰口を言って嫌っていた。なんて経験はないだろうか?この「他者」のわからなさ、そして不気味さ。

意図したかどうかわからない。しかし、この作品は、社会的動物であり、他者と関わらないと生きてはいけない人間の根源的な恐怖を射抜いている様な気がしてならない。

ラスト、同化されてるかもしれない仲間と主人公が2人だけ残り、正体はわからぬまま映画は幕を閉じる。この恐怖は人間がいるかぎり、普遍だという事を暗喩して…。
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