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波光きらめく果ての一のレビュー・感想・評価

波光きらめく果て(1986年製作の映画)
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制御の利かない性欲と孤独の耐えられなさ故に何処にも居場所を持てない、端的に言えば生きるのが大変ヘタクソな女の結構つらい話なのだが、それを演じる松坂慶子のナイーブなんだけど根明で自意識から放たれているような雰囲気が救いになっていて良い。50年代60年代だったらそれこそ自殺か心中かで終わりそうなものを反転させて、開幕早々睡眠薬ガバ飲みして朗らかに眠りにつく慶子。時代が違うなー。むしろ旦那の渡瀬恒彦を寝取られる大竹しのぶのほうがスリリングで、いつ狂い出すのかというその時限爆弾性がわりと物語を引っ張っている。そしてついに、恒彦との乱暴なセックスのあと、深夜にひとりスプーンでアワビの身を貝から剥がすという問題のシーンが。慶子の前で魚を捌くシーンも怖い。セックスのメタファーとしてフォーク2本の指を噛み合わせる描写や三國連太郎がデカい魚捌く場面など、カトラリー周りの演出が基本常軌を逸していて好き。あと、恒彦が作る焼きそば食いたい。
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