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ブッチャー・ボーイの一のレビュー・感想・評価

ブッチャー・ボーイ(1997年製作の映画)
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所謂“信用できない語り手”による虚実妄想入り交じった一人称回想という構造の中に、カトリックの抑圧的価値観が浸透したアイルランドの田舎町の息苦しさ、それと結び付いた黙示録的な核戦争の終末論、『ボディ・スナッチャー』的なエイリアンのメタファーといった60年代初めのある意味リアルな時代背景を折り込みながら、一人の生意気な少年が狂気に呑まれていく様を、ブラックユーモアとノスタルジーと共に流れるように描写していく、という原作を忠実に映像化していた。ほとんど喪失の連続と言っていい悲痛な物語の舞台となるアイルランドの景色の美しさが強く印象に残る。少年が幻視するマリア様をシニード・オコナーが演じてるのが一番面白い。
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