ファッションも音楽も世界観全部がグサグサに刺さってきた。当時はこんなにも時代の象徴として平成世代をグサグサに刺してやろうと思って映画を作っていたわけではないと思うが、最高にイケてるものをぎゅっと詰め込んでこだわり抜いたからこそ、作品が後世に残ってグサグサに私たちを刺してきてるんだろうなと思って良かった。それって何かを創作するうえですごくすごく大事だと思う。
幸せを前にすると人は急に臆病になる。目の前の物が本当に幸せなのかも分からないし、自分がそれを受けとれる存在なのか分からなくなるし、その幸せをいつか失うときが来るのが怖くなる。そんなときに桃子の背中を押してくれる人がイチゴで良かった。打算抜きで後悔しない明るい方向にぶつかっていける、素直で誠実なイチゴだから桃子は安心できたんだと思う。
達観して誰にも期待しない桃子が、イチゴにだけは怒れていたのがとても良かった。怒るという行為はその人に期待していたということだし、それを感情としてぶつけることはその感情を無碍にせずに受け取ってくれる相手だと分かっているということ。2人の関係性が、日々を生きていくなかで他人なんて信用できないし期待できないと尖っていく私の心に沁みてきた。