世界のタナカ

エル・スールの世界のタナカのレビュー・感想・評価

エル・スール(1982年製作の映画)
5.0
「絵画のような美しさ」という枕ことばは、『バリー・リンドン』を筆頭にいろんな映画でなされるのだけれど、ビクトル・エリセの映画はその究極じゃないかとすら思う。全てのショットが繊細で力強さに満ちていて、異様なほどの引力がある。

『ミツバチのささやき』にあった、(おそらくはスペイン内戦を背景とした)メッセージをストーリーの裏側に隠すあの象徴性は薄れたが、『エル・スール』には的確なショットの積み重ねで物語を駆動させてゆく、至極まっとうな映画的快楽がある。事実上未完であるにもかかわらず(資金難により、後半パートが撮影されていない)、これが映画だ、と感じさせる佇まいにしびれた。
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