最高。大橋裕之先生のファンからすれば、これはまさに大橋漫画の世界。かろやかで、やさしい。余白のあるあの独特な世界観は、ほんとうに映画に向いていると思う。
マヒトゥ・ザ・ピーポーも劇中で歌っていたけれど、誰も見ることのない(エンドロールに名前のない)人々の物語。彼らは何も達成せず、あるべき場所へとぼとぼと帰っていく。でも、ただそこにある人や街は、ただそれだけで価値がある。どこかでだれかが見ていてくれるんじゃないか。その気持ちが、「『ベルリン・天使の詩』が好きだ」と口走らせる。
カメラを回しつづければ、きっとケーキだってまた意味をもつ。上質なフランス映画のようでもあるが、「ほら、三親等だから」のニュアンスに日本映画ならではの味わいが宿る。できればこの監督、脚本コンビでまた観たい。てか量産してほしい。