Melko

セカンドベスト/父を探す旅のMelkoのレビュー・感想・評価

3.9
”I won’t be second best, Jamie. If it’s going to work it has to be as father and son.”
「2番目になるつもりはない」と。

犯罪者の息子が養護施設に入り、養子を欲していた実直で物静かな男と出会い、まあまあなすったもんだを経て、家族になる話。

この息子ジェイムズ(ジェイミー)がとてもこじらせている子どもで、幼い頃父親から言われた言葉に捉われて精神を蝕まれ気味。とても気難しく癇癪も起こし、大人を冷めた目で見ているかと思いきや、思い切り甘えたり、大人の気を引き反応を試すために自傷行為までしてしまう。まだ10歳。自分が逮捕され一人になってしまう息子に、心の拠り所を与えるためとはいえ「パパを一番に愛してるという約束を破ったら、命はない」は重すぎる
この呪いのような言葉に捉われ精神的にとても不安定なジェイミー。
そして、そんな彼を引き取ろうとする41歳の独身男グレアム。(設定年齢にしては顔が老けすぎな気もする…)認知症の父の面倒を見ながら、郵便局員を真面目にこなす、悪く言えば面白みのないつまらない男。趣味もない。好きな女性もいない。彼はこれまでの人生でたくさんの事を諦めてきたらしい。

そんな2人の物語だから、とっても暗く重苦しく、テーマも展開も難しい。キツいなあ……と思いきや、ラストの不器用な爽やかさに、あぁこの映画はとても優しい視点で描かれていたのだな、と思わされる。
やはり、「泣きたい時に泣け」だと思う。
泣きたい時に「大丈夫だから、泣かないで」と言われるより、「そばにいるから大丈夫だよ。」と言われる方が良い。泣きたい衝動の時に泣いた方が絶対良い。
そうすれば、ちゃんと大切な人とお別れできるし、自分がどうしたいかという気持ちに向き合える。

子どもは、親から必要とされてるか/されてないかをとてもよく見ている。
親から望まれたように育てなかったと思い込み、言いたいことを飲み込んで色んなことを諦めてきたグレアムが、ハッキリと「2番目になる気はない」とジェイミーに伝えられたラスト。ぎこちなく寄り添いながらもしっかり手を繋いだ後ろ姿に、あぁ大丈夫だ、これから2人はちゃんと生きていける、とほっこりした温かい気持ちになった。

郷愁を誘う湿った音色のギターが鳴るBGM
温かな、そして気高く前向きな音色のエンドロール曲
音も非常に良い仕事をしていた。

チョイ役だけど、アランカミング若っっ!
お喋りでド派手な女性職員も良いキャラだった

何度も見たい作品ではないけれど、ふと、たまに見返したくなる作品に、また出会えた。
Melko

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