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ワイルド7のgintaruのレビュー・感想・評価

ワイルド7(2011年製作の映画)
3.5
クライムサスペンス、アクション映画としてまずまず楽しめた。たぶん、以前機内映画かなんかで見たことがある。でもほとんど覚えていなかった。すなわち、その程度の印象にしか残らないストーリーではあるけれど。
ストーリーとしては大きく二部に分かれており、前半はテロ組織が国が極秘に研究を進めていたウイルスを強奪し、それを飛行船からばらまくという脅迫事件を解決するストーリー、後半は公安調査庁情報機関(PSU)の情報分析部門トップの桐生がその地位を利用した悪事に手を染めていることを知った草波隊長がワイルド7に彼の処刑を命じ、PSUとの戦いになるというストーリー。
この二つの話に関連性はあまりない。なぜこのような構成にしたのか疑問だ。しかも後半の桐生という一役人を追いかけるのにあまりにも大がかりになるのはちょっと無理がある。
原作の大ファンなので原作はよく知っている。それと比較すると、やはりワイルド7として見るべきものではないなという感じだ。キャラクターの設定はほぼ原作に沿っているが、ストーリーは全くのオリジナルで原作のテイストは感じられない。まず、原作ではワイルド7は皆、警視以上の階級の警察官であり、たまに警官ともめては警官が襟の階級バッジを見て「失礼しました」となるのがお約束のシーンで、そこに見る者は権威主義に対する皮肉が込められていることを知り、痛快感を味わうのだが、映画では単に最初は謎の集団、後半は国家に反逆する無法者の集団としてしか描かれていないのは残念だ。
また、原作のワイルド7のメンバーはそれぞれが特技を持ち、バイクにもそれぞれ固有の特殊装置が付いており、それがストーリー進展で重要な役割を果たしていくのだが、映画ではその設定はされているものの、ストーリー上でほとんど機能していないのが残念だ。
コスチュームも原作ではヘボピーを除き皆白バイ警官の制服に似たような統一されたユニフォームだが、映画では原作でよく出てきた敵方のバイク族のようなそれぞれちょっとずつ異なる革ジャンスタイルなので、よく言えば今風、個性的だが、やはり原作ファンからするとあまりかっこいいとは言えず、違和感がある。実写といえばワイルド7にはテレビドラマ版がもう50年以上前にもなるが存在し、こちらでは制服もほぼ原作どおりで原作の世界観をほぼ忠実に再現していたので、これを上回る映画化を期待したが、やはり無理だったようだ。
冒頭部、「お前らを退治する。」「へっ、逮捕だろ。」「バキューン」「だから退治といっただろ。」という下りは、原作でもTVドラマでもある有名なところで、この始まりは期待感を持たせた。しかしその後はどんどん原作のイメージと乖離していく。飛葉とユキの間に恋愛感情があるというのがまず違う。原作では喫茶店で働くイコちゃんがワイルド7メンバー全員のアイドルであり、かつ、飛葉といい感じという設定であり、ユキはあくまでも新入りメンバーみそっかすのユキだから。
飛葉とユキが最初に遭遇するシーンも原作では狙撃犯のユキを追っていた飛葉が室内プール屋上から狙撃を終えて逃走を図るユキとすれ違う時に火薬の匂いを感じ、察知するというところがあるのだが、映画では同じようにすれ違うシーンがあって、一瞬同じようなシーンになるのかと期待したが、実際にはわからないままだったので肩透かしを食った感じがあった。
世界に娘がいて、彼女を守るために世界が死ぬというのもちょっと違うなあという感じだった。
キャスティングについて言うと、飛葉役は瑛太だったが、世界役の椎名桔平の方がかっこよくて似合ってそうな感じだった。ユキ役の深田恭子はちょっとマジメ過ぎる感じだった。もっと色っぽさと家族を殺された壮絶な過去を抱える暗さの対比を出せるといいんだけどね。
草波隊長役の中井貴一はうまくはまってた。やっぱりうまいんだな。桐生役の吉田鋼太郎も悪賢い小役人という感じの絶妙の軽さを出していてよかった。
要潤が記者役だったが、ワイルド7のメンバーの一員にした方が向いてたと思った。仮面ライダー役やれるくらいなんだものね。だから、実はあとでメンバーに加わるのかくらいな目でも見てたけれどね。
クライマックスのPSU本部内での銃撃戦はちょっと長くてだれた。起伏がなくて単調なんだもの。もっとバイクアクションをやってほしかったな。
ラストは、桐生が握っていた世界中の闇のシンジケート情報を草波が世界中に公開することによってその悪の組織から報復されるように仕向けることで、ワイルド7が手を下すことなく桐生は葬られることになるというものだが、なんかややこしいし、壮絶なラストというわけでもないので中途半端な感じだった。
まあ、もっといい出来だったら続編もあっただろうにねえ。
バイクやセブンレーラー(バイクを運ぶ大型のトレーラー)がもったいない。
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