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さくらももこワールド ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌のnanaのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

まる子と絵描きのお姉さんの交流を描いた物語。
小さい頃に何度も観て、歌とかはなんとなく憶えていましたが物語展開はけっこう忘れていました。

今作は大瀧詠一、細野晴臣、笠原シヅ子など、既存の楽曲が多く使われています。
音楽パートは湯浅政明が担当している部分もあり、カオスで自由な映像表現を楽しむことができます。
彼が手がけているのは『1969年のドラッグ・レース』と『買い物ブギ』で、前者は車に乗っているときの子供の妄想を具現化したようなシークエンス、後者にいたっては本当に物語と全く関係のないくだりにもかかわらずやけに時間を割いていることが楽しい。

学校で教えてもらった『めんこい仔馬』、その曲は実は成長した仔馬が最終的に戦地へ軍馬となり、それを「万歳」で見送るという悲しい曲でした。
この『めんこい仔馬』の展開は終盤にかけてこの物語とリンクしていきます。

お姉さんは恋人からプロポーズされ、彼の実家である北海道の牧場で一緒に暮らさないかと提案されます。
お姉さんは絵描きを続け、東京で暮らしてみたいのだと一度は彼のプロポーズを断りますが、まる子の説得もあり、自分の中にある彼への思いを見つめ直してから彼を追いかけ、結婚を決意。
ここは1992年の作品ということもあり時代の限界とも言うべきか、「女性は自分が望む土地で夢やキャリアを追うよりも、結婚して男性についていくことが一番良い選択である」として描かれるところは、今だと違う描き方をされる部分かもしれません。
もちろん、お兄さんがお姉さんを無理やり北海道に連れて行ったわけではなく、これはあくまで彼女が自分で選択したことです。

結婚式当日、白無垢を纏った美しいお姉さんを遠くから見たまる子は、大きな声で万歳三唱をします。
悲しいけれど、泣かずに万歳で見送る。このシーンは、あの『めんこい仔馬』が5番の歌詞で戦地へ向かうくだりがリフレインします。
今作は「結婚してお嫁に行くこと」と「戦争へ行くこと」を重ねるという少しギョッとする作劇をしています。
今作は結婚否定映画ではないし、お姉さんはきっと北海道で幸せな新婚生活を送ったのだと思いますが、どこか皮肉に捉えることができるのも今作の面白さ。

お姉さんとの別れは涙を誘いますが、やっぱりこれはちびまる子ちゃんなのであくまで感動話では終わらせない、結局「トホホ…」なオチは笑うし、またいつもの日常に戻った感もあります。

前衛的かつ楽しい音楽シーン、優しい物語、相変わらずの尖ったギャグ、キャラクターの描き込み(最初のシーンに出てくる、物語に全く関係ない高校生?カップルすら魅力的)など、久しぶりに観た『わたしの好きな歌』はやっぱりわたしの好きな映画でした。
なんか大野君が転校するみたいな映画もあった気がしますが、それも久しぶりに観たいな。
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