DJあおやま

さくらももこワールド ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌のDJあおやまのレビュー・感想・評価

4.3
さくらももこのインスピレーションと、音楽への愛が詰まった名作。これが30年近くも廃盤状態だったなんて恐ろしい。簡単にNETFLIXで観られるようになって感謝しかない。
さくらももこの描く和製ディズニーというか、素朴な色彩と優しいタッチの織りなすファンタジックな世界観が好きだ。それを素敵な音楽たちと堪能できる上、ストーリーもしっかり感動的なのだから素晴らしい。また、さくらももこの描く女性の可愛さったらなくて、本作に出てくる絵描きのお姉さん・しょう子が本当に可愛らしい。オーバーオールのラフな格好や、おめかししたワンピース姿、そして白無垢姿とどれも良くて、セル画の雰囲気と相まって舌を巻く可愛さ。それと、まるちゃんの素朴な丸っこさも可愛らしくて、やっぱりさくらももこの絵が好きだなと再認識できた。

冒頭、ヒデじいの運転するロールスロイスから見える風景から、大瀧詠一の『1969年のドラッグ・レース』が流れていっきにさくらももこの幻想的な世界観に突入する。「ああ、こういう映画なんだな」とわかって、自分の気持ちが高揚するのがわかった。2曲目からインドネシアの歌謡曲が流れて、いきなりハズしにきてびっくりしたが、細野晴臣の『はらいそ』なんか流れてこれまた素敵。はまじのチョイスする、笠置シヅ子の『買い物ブギ』なんてめちゃくちゃカッコ良い。
『ちびまる子ちゃん』と言えば、昔は日曜の本放送に加えて、学校終わりに再放送まで観ていたが、大人になるにつれて観なくなってしまった。当時より、藤木や永沢なんかのスポットライトの当たらない男子たちがなんだか愛おしく見えた。本作では、はまじ、ブー太郎、関口が地味な男子の悲哀を歌った、ビートルズ風の『B級ダンシング』という楽曲が聴けるのだから、ますます愛しい。
『クレヨンしんちゃん』が時代とともに描かれる時代も変化していくのに対して、『ちびまる子ちゃん』は、一貫してさくらももこが幼少期を過ごした時代が描かれている。この時代の人たちは、デパートや水族館などへ“お出かけ”する時は、決まっておめかしをする。そんなお淑やかさみたいなのが可愛らしくて好きだ。

ストーリーは、静岡で出会った絵描きのお姉さんとの交流を描いていて、劇場版だからといって非日常的な事件が起きるわけでもなく、いたってシンプルでこじんまりとしている。まるちゃんが授業で聴いた『めんこい仔馬』の歌詞に準え、お姉さんとのお別れが描かれ、まるちゃんが泣くのを我慢してバンザイする姿に涙が出そうになった。ああ、なんて良い話なんだろうか。
普段ケンカばかりしているまるちゃんのお姉ちゃんが、しょう子のことを嬉しそうに話すまるちゃんにヤキモチを焼いているシーンは、微笑ましくてたまらなかった。また、最後、しょう子との別れを悲しむまるちゃんを、そっと撫でるお姉ちゃんにはグッときた。こういう家族愛みたいな描写がたまらなく好きなのだけど、『ちびまる子ちゃん』ではなかなかないので見れて嬉しい。
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