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男はつらいよ 寅次郎忘れな草のmatchypotterのレビュー・感想・評価

3.9
『男はつらいよ』、第11作目。
今回は前回からそう間を空けず進むぞ。

ここ何作かの流行り、寅さんの夢の寸劇。
今回は時代劇風。寅さんの啖呵は時代劇との相性が良いね。

今回も相変わらずの団子屋の件。もうクセになる。

帰ってきて早々、団子屋の面々が仏壇の前でお経を挙げてる。
それを茶化しに茶化す。無礼極まりない。ドリフのコント並み。いや、元ネタはこっちか、というレベル。

それで案の定、喪に服す場をぶっ壊し、怒られる。その後にまた揉める。

「お前は、なぜ、あんなところで不謹慎に人を笑わすのか!」
すると、寅さん、
「笑うお前らが悪いんだろ!そんなんで、笑う方が不真面目なんだよ!」

もう、売り言葉に買い言葉の頂点みたいな、明らかに、絶対的に寅さんが悪いのに、それをなぜだか侘びもせず、屈服せず。

そこから、とはいえ後ろめたさもあり、さりげなく取り繕って挽回しようとさくらの願いを叶えてあげようとして、さらにさらに空回る。
「ピアノが欲しい」、で、ピアノはあれか!となり、買ってやれ!となり、俺が買ってやるわ!となり、、、、おもちゃのピアノ。

そこを団子屋、寅さんを立ててあげようとするも、相変わらず間の悪いタコ社長をキッカケにまたしても寅さん、余計な一言を言い放つ。

そりゃ「出て行け!」だわ。

今回はこの団子屋を舞台にしながら、遠方のロケもあり、行ったり来たり。出て行けば早々に帰ってきて、帰って来れば早々に出て行く。
出て行くかと思えば、、、、出て行かない。

出先で出会ったどさ回りの歌手、浅丘ルリ子。来た。キタ。めちゃキレイ。
吉永小百合からの、八千草薫からの、浅丘ルリ子。すげぇな、『男はつらいよ』。

今回は浅丘ルリ子との出先での、ほんのひとときの身の上話と汽車の車窓から見える景色の話。
これで、寅さんのスイッチが入る。

そして、団子屋での上流階級だの中流階級だのの話から「寅さんは財産ではなく、目に見えないモノをたくさん持ってる、、、人を愛する心。それはどんなにお金を持ってても買えない」の言葉にさらに焚き付けられてどんどん舞い上がる、、、いつも通り。

人を愛する心はあっても、デリカシーのカケラもない。
義理と人情はあっても、空気は読めない。
人のことにはグイグイ首を突っ込むのに、自分のことはてんで前に進まない。

浅丘ルリ子、ほんと可愛い。そして、カッコいい。言うこと、その言い方。ハイカラ娘って多分こう言うことを言うんだな。

さくらちゃんが好きでそこは絶対ブレないけど、浅丘ルリ子がハイカラ過ぎて、あのさくらちゃんがより純朴に見える。

ハイカラなリリーと風天の寅さんとの屈託のない旅ガラス同士の粋なやりとりも好きだし、それを見ながら微笑み、慮ってあれこれ思案しながら結局騒がしくなる団子屋とさくらちゃん達と寅さんのいつものやりとりも好き。

今回のリリーは寅さん以上に“流れ者”。
いつも騒がしく掻き回す寅さんが、慮るほど。
彼女も、“風天”にも帰る場所がある寅さんの環境に嫉妬するほど。

北海道の件もなんであったのかわからなかったが、今回の話を通してみると、地に根を張り、裕福でなくても過酷でも真面目にコツコツ働くことの意味。

いつもはそれに寅さんがしっぺ返しを喰らったり相容れぬ恋となり挫折したりするが、今回は逆に寅さんがそれに触れ、リリーに触れ、その意味に寅さんが触れて行く。

結局、リリーはリリーでまさかのオチはあり、これもまた寅さん機を逸すわけだが、今回は寅さんが惚れてフラれるとも少し違う、哀愁と清々しさがあった。

にしても、毒蝮三太夫って、、、。さすが、スゴい存在感だわ。


F:1880
M:2166
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