はなたまご

禁じられた遊びのはなたまごのレビュー・感想・評価

禁じられた遊び(1952年製作の映画)
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 戦争で孤児となった少女ポーレットと心優しい農家の息子ミシェル。二人が始めた遊びはやがて周りを巻き込む騒動へと発展していく・・・。
 この映画が伝えんとするところは一体何だったのか、見終わった後に考え込んでしまった。死が身近すぎる世界、子どもの純粋さ、懐疑心と虚栄心にあふれた大人達、嘘、信仰の希薄化・・・などキーワードは多いが、どれも物語の中に平等に存在し、どれか一つのテーマに集約されるものではないと感じた。強いて言うなら「戦争のむなしさ」かもしれないが、人によって感じるところはまちまちだろう。私は子どもにとっての別れの体験について考えた。幼い子ども達の精神世界に神や楽園といった体系立った宗教的概念は存在せず、葬式などの形式的な儀礼も十字架などのシンボルも何の意味も持たない。これは、ポーレット達が小動物や虫の埋葬を遊びにしていったことにも表れている。大人は人の死を宗教を慰みにして考えることができるが、子どもにはそれが難しい。つまり、子どもにとっての死や別れとは大人が思う以上の現実であり、絶望と喪失感に打ちのめされる体験といえる。この映画は第二次世界大戦下を描いた作品だが、そうした拷問のような体験を日常的に繰り返す子どもたちは今この瞬間にも増え続けている。