キャッチ30

式日-SHIKI-JITSU-のキャッチ30のレビュー・感想・評価

式日-SHIKI-JITSU-(2000年製作の映画)
3.5
 奇をてらった映画だと思った。プロットはシンプルなのに、語りは技巧を凝らしているように見えたからだ。

 舞台は山口県宇部市。ある男が帰郷すると若い女性が線路に横たわっている。彼女は「明日は、私の誕生日なの」と言い、奇妙な儀式をする。彼女は毎日同じ言葉を繰り返すが誕生日が訪れる気配はない。男はそんな彼女に興味を覚える。
 やがて男は彼女と同居することになる。彼女は廃ビルに住んでいる。男は彼女を被写体にビデオを回すようになる。そこで男の正体が映画監督ということが見えてくる。彼はアニメ映画で成功をおさめたが、スランプに陥ってしまったらしい。男は彼女から"カントク"と呼ばれるようになる。モデルは明らかに庵野秀明監督だ。

 観察していくなかで見えてくる彼女の素顔。奔放に振る舞っているように見えて心は壊れている。背景には母親に愛されなかったことやいつも姉と比べられてきたことが関係している。浴槽にこもっている姿は自分の殻に閉じこもっているように見える。

 庵野秀明監督は様々な工夫を施す。赤を基調とした衣装や美術、360度回転するカメラワーク。宇部市の工業地帯や線路といった風景も虚無感が増す。