ヒロ

孤独な声のヒロのレビュー・感想・評価

孤独な声(1978年製作の映画)
4.5
ロシア革命後の激しい内戦で心を失い、人間的感情が麻痺した青年が絶望の淵で触れた一筋の光。生と死、破壊と再生を経て、一度壊れた人間が心を取り戻すまでのお話。鬱9光1の誰得俺得映画。

冒頭から画の美しさが止まらない。
生と死を同じ空間の中の場所の移動として捉えた古代的死生観のもと、ニキータの心理的死やその後の地獄を想起させる湖から市場への一連の画作り。
陽光に照らされ希望に満ち溢れているリューバ、心の闇から抜け出せないストーブの炎に照らされたニキータ、同じ空間であるはずなのに対称的なイメージを持つ象徴的なツーショット。キメッキメのバッキバキ。

画だけでなく音が与える心理的演出も見事。
ニキータの内面を表す腹の底に溜まるような低音が強い暗黒孤独の地獄チューン、それと対称的にリューバといるときに流れる朗らかなまるで浄化されるような天国極楽お花畑チューン。耳キーンなるほどの高低差が表す幸福を受け入れられない壊れた心が痛すぎる。ニキータの孤独な声は誰にも届かない。

これが長編処女作で映画大学卒業制作。
マジで恐ロシア。
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