きゅうげん

ブラック・ダリアのきゅうげんのレビュー・感想・評価

ブラック・ダリア(2006年製作の映画)
3.9
ジェームズ・エルロイの“LA”シリーズを原作に、デ・パルマ監督がジョシュ・ハーネットやヒラリー・スワンクなど2000年代若手スターと挑んだ、戦後最大の未解決事件の映像化。


ハリウッド・スター・ワナビーの怪死は様々な作品の題材として“文化的引用”がなされますが、その代表格といえばこのブラック・ダリア事件。
映画産業の光と闇、新興財閥の貴族化、凶悪事件の大衆消費……古き良き西海岸を舞台に刑事コンビがどんどんドツボに嵌ってゆく展開は「いよっ、エルロイ屋!」って感じで最高。
そして、照明や色調などのリッチな完成度はもちろん、縦横無尽なクレーン撮影やオールドスクールな編集演出などを堂々とやってのける胆力は、流石のデ・パルマ&シグモント組。

真相解明に迫るにつれて説明過多になったり、リー刑事のミステリとブラック・ダリアのサスペンスとの二軸が上手に両立できてなかったり、伏線の張り方がストレートすぎたり……、あまり鋭敏とはいえない作劇ではありますが、それがかえって事件の茫漠と混迷を象徴してるようで味になってます。
ウィリアム・フィンレイ演じる、事件の中心の変態にもっとフォーカスして欲しかったですけどねぇ〜。
あとレズビアン・クラブのパフォーマンスの注力っぷりは凄かった。ジョシュ・ハーネットもヒラリー・スワンクも完全に霞んでましたね。
ハリウッド・バビロンの片鱗を目撃できました……。