momopipi2

ブラック・ダリアのmomopipi2のレビュー・感想・評価

ブラック・ダリア(2006年製作の映画)
5.0
「ブラック・ダリアを映画化するとは?」それを作り手が考え抜いた結果の映画。

例えば、不要(と、見えてしまう)な出来事を排し、人物関係を簡潔に、事件に直結する事柄のみに焦点を当て、映画自体を分かりやすくすることも可能だったはず。
しかし、映画はその不要(と、見えてしまう)な部分にも繊細な演出と尺を設ける。

バランスを壊すほど長い尺のボクシングシーンや、聞き込みをする主人公にわざわざ歌姫(敢えて歌姫で!)の熱唱するところ異様な光景としてカットバックで挟み込むシーン、あえてクレーンを使った長回しで街全体を捉えるシーン、その他諸々街に溢れる闇。
そこに焦点を当てることがブラック・ダリアを映画する意味。

つまり、ブラック・ダリアを映画化するとは、‘‘事件の真相を解き明かし語る”事ではなく、ブラック・ダリア事件の背後にある‘‘フィルムノワールとしての1940年代LA、暗闇の街とその時代の空気を描く”こと。
映画を複雑にしたのは、その‘‘分からなさ”こそが、ブラック・ダリアという時代の空気感であり、それに魅了されてしまった登場人物たちの心の闇だから。

そこだけが安息の地であるかのよう主人公の目の前に白く純白の世界が広がる。その瞬間、暗闇の誘惑が手招きをし、目の前にあったはずの安息の地が現実の色を取り戻すという、完璧な照明と演出で語られる映画ラスト。

とても贅沢な映画だと思いました!
momopipi2

momopipi2