mh

姉妹のmhのレビュー・感想・評価

姉妹(1955年製作の映画)
-
畔柳二美のベストセラー「姉妹」が原作の青春ドラマ。読みは「きょうだい」とのこと。
松竹のスター野添ひとみと、東映のスター(にこれからなる)中原ひとみ が旬も旬でふたりの輝きが素晴らしい。
序盤に同級生とのキスがあるんだけど、エス関連はそれきりだった。吉屋信子「花物語」が1916-1925年(T5-T14)ということなので、少女小説の影響下にある女学生が多そうな時代。
作者の体験が元になった原作の通りであれば時代背景は昭和一桁の頃。
戦争がなくっちゃ景気が良くならないという会話は、昭和恐慌(1930年、S5頃)が念頭にあるのかもしれない。登場する機関車が「D51」だったのはケアレスミスかと思ったら、時代考証的にも理にかなっているのか。
「カチューシャの唄」がしきりに歌われるのは、公開年のころのムーブメント「うたごえ運動」によるものではなく、松井須磨子の「カチューシャの唄」のメガヒット(1914年、T3)による影響か。
職場の休憩中に合唱の練習してたり、労働運動のプロットがあったりと1950年代後半の労働争議が盛んだったころと混同しやすくなってる。
労働運動を支援する共産党員への弾圧は、レッドパージのそれではなく、小林多喜二がころされたほうのやつ。
全編を通して、労働者問題を貧困問題を考えざるをえない作りになっており、原作がもともとそうなのか、それとも松竹からパージされた監督の趣味なのかわからなかった。
楽しかった少女時代との決別に、姉の見合い結婚を重ねるのもそうだけど、主人公姉妹に反発するハッちゃんの気持ちが、ナレーションもないのに伝わってくるのはうまいよなー。
エリートタイプなのに、大学にもいかず、すぐに嫁に行ってしまうというキャラ造形もいいんだけど、好きなひとに焼きスルメを勧められるくだりなどは、とんでもなく素晴らしかった。
結婚相手の顔を出さないとかも気が利いている。
端々に配慮の行き届いた、素晴らしいドラマだった。
面白かった!
mh

mh