◎銀座のユーワ化粧品に「マネキンボーイ」として就職したハンサムガイ、会田時彦（上原謙）の相手を争う、
日本舞踊の師匠君子（森赫子）、
キャバレー歌手百合（笠置シヅ子）、
化粧品会社の女工場長小村輝美（高杉早苗）
の三人による恋の鞘当て。　

1949年、新東宝製作、東宝配給
モノクロ、81分、デジタル上映
＊多少ホワイトノイズが気になる。欠落なしか。



【以下ネタバレ注意⚠️】






ううむ、典型的なラブコメだけど、これはつまらない。

最初の上原謙が日本離れした銀座の街を歩くシーンあたりは、アメリカンな味で行くのかな、てな感じだったが、その後は一貫してないし、
ユーワ化粧品の社長が、かの清川虹子だったのは、ちょっとした出オチかも知れないが、戦後間もない頃としては斬新かな、
とも思ったが、あまりその設定が生きて来ないし、
ギャグはソフィスティケイティッドな会話の面白さ
なんかでは決してなく、座ると椅子が壊れる、とかの単純なスラップスティックの天丼ばかりだったりとか、
で、つくづく、
『淑女は何を忘れたか』（1937年 2024.3.15 レビュー）とか、
『長屋紳士録』（1947年 2024.3.28 レビュー）　
とかに始まる小津安二郎によるコメディ諸作は、
やはり格別、特別に上手い洗練された作品群だったのだなぁと再認識した次第。

音楽も服部良一が担当し、ブギの女王笠置シヅ子を起用しているのに、彼女の見せ場、聴かせどころが少な過ぎるし、ね。

まぁ設定としてだけだが、ユーワ化粧品は、社長だけでなく、工場長も女性だというのは、時代の先取りを（あくまでコミックな素材としてだが）意識したってことではあろう。

その工場長＝輝美を演ずる高杉早苗は、小津の
『宗方姉妹』（1950年 2024.2.28 レビュー）
にも京都の骨董商の女主人真下頼子として登場。
Wikipedia 「高杉早苗」（1918-95）を読んで初めて認識したが、彼女、三代目市川段四郎（1908-63）の妻にして、三代目市川猿之助＝二代目猿翁（1939-2023）と四代目段四郎（1946-2023）の母、四代目市川猿之助（1975- ）、九代目市川中車（香川照之 1965- ）の祖母にあたる御仁だったのですね。
どおりで独特の雰囲気のある女優さんな訳ですな。

《参考》
＊1 結婚三銃士
1949年3月21日公開、72分
moviewalker.jp/mv27335/

＊2 新東宝データベース1947-1962
結婚三銃士
nipponeiga.com/shintoho/film/1949/19490321.php

＊3 ぴくちゃあ通信　2023-09-10
『結婚三銃士』(新東宝1949：野村浩将)
hati8823.hatenablog.com/entry/2023/09/10/200000

＊4 パンクフロイドのブログ
恋人との結婚のために不向きな営業職に就いたのに・・・「結婚三銃士」を観て
2023-09-22 07:00:00
ameblo.jp/punkflod/entry-12820927798.html

＊5 ブギの女王から銀幕のスターへ
特集 笠置シヅ子
2024.3.30〜4.19 シネ・ヌーヴォ
www.cinenouveau.com/sakuhin/kasagishizuko2024/kasagishizuko2024.html

幼なじみの女、キャバレーの女に好意寄せられて挙げ句は口紅会社の若い工場長の女がでてくるとかお前ギャルゲーの世界の主人公かよ、といった時彦君だけど本作の魅力は全く彼にはない。むしろなんでこんな男がモテるんや…。やはり顔だろうか…。と言いたいくらいキャラ的な味付けには薄い。でもモテるんだよなぁ。守ってあげたくなる系だろうか。

一応本筋はラブコメではあるけど恋愛的な面白さというよりはコメディのほうが強い印象。だが正直、時彦×各女のやりとりよりも、輝美、百合、君子の間で結んだ明らかな同盟と女同士のやり取りが本作の一番の魅力であり見どころと言ってもいいだろう。
ただそれ以外は笠置シズ子の歌を超える見どころはない

衛星劇場
幻の蔵出し映画館
2021.06

• #幻の蔵出し映画館