かたゆき

ディープエンド・オブ・オーシャンのかたゆきのレビュー・感想・評価

3.0
3人の可愛い子供たちに恵まれ、現在子育て真っ最中の専業主婦ベス。
手のかかることも多いが、優しい夫にも助けられ幸せいっぱいの充実した毎日を送っていた。
そんな彼女をある日、悲劇が襲う。
子供たちを連れて高校の同窓会に出席した際、ちょっと目を離したすきに3歳になる次男ベンが迷子となってしまったのだ。
当初はすぐに見つかると思っていたベスだったが、何処をどう捜してもベンの姿は見つからない。
友人たちの助けでテレビでの公開捜査に踏み切るも何の手がかりも得られることなく、時間だけが空しく過ぎてゆく。
罪悪感と喪失感からふとした瞬間に半狂乱となるベス。次第に険悪となってゆく家族。
失踪から1年が過ぎたころ、ベスは残された子供たちのため気持ちに区切りをつけることを決意するのだった――。
9年後、成長した長男や長女とともに穏やかな日々を過ごしていたベス。
それでもベンのことを1日たりとも忘れたことはなかった。
そんなある日、ベスはたまたま近所の少年を目にした瞬間、雷に打たれたような衝撃を受けるのだった。
その男の子は自分が思い描いていた成長したベンと瓜二つだったのだ。
果たして彼は本当に9年前にいなくなった我が子なのか?
警察とともに少年のことを調べ始めたベスはやがて衝撃の事実に辿り着く……。
失踪した我が子を巡って人生を翻弄される母親の苦悩を描いたヒューマン・ドラマ。

非常に丁寧に描かれた作品で、冒頭から流れるように続く子供失踪までの過程にまず惹き込まれました。
その後、3歳の子供がいなくなってからの母親の苦悩はとてもリアルで、ミシェル・ファイファーの抑えた熱演の力もあり、見ていて痛々しいくらい。
夫や残された長男の苦しみなども抜かりなく描かれており、この監督の演出力の高さは相当なもの。
特に、自分のせいで弟が居なくなってしまったと自らを責める一方、弟一辺倒で自分を二の次にする母親に反発する長男の哀しみはダイレクトに伝わってきました。

ただ、これはきっと意図してのことだと思うのですが、良くも悪くも軽いんですよね、この作品。
心に重くのしかかってきそうなシーンもそうなる直前くらいにすぐ別の場面へと移行する。
最後まで流れるようにテンポよく進んでゆく。
きっとそれがこの作品の美点だと思うのですが、自分はもう少し魂を震わすような圧倒的な現実を見せつけるような物語が好みですかね。
それは失踪したかもしれない次男が9年後近所で見つかるシーンで顕著になります。
真相はネタバレになるので避けますが、いや、さすがに偶然が過ぎるんじゃないですか。
そこの部分もちょっと引っかかってしまって、僕はどうにも物語に入り込めず。
途中からほとんど出てこなくなる妹の存在も気になりました。

と言ったわけで完成度は確かに高いとは思うのですが、好みの問題もあり自分はそこまで嵌まれませんでした。
かたゆき

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