カワサキ

ゾディアックのカワサキのレビュー・感想・評価

ゾディアック(2006年製作の映画)
4.9
久しぶりの鑑賞。
実際の未解決事件に基づき、まるでドキュメンタリーのように淡々と物語が進んでいきます。
主役はまさに「ゾディアック事件」で、あとのすべて(犯人さえも)はただの脇役。
すなわち、大袈裟な人物描写、ドラマチックな展開、ほとんどなし。
もちろん未解決事件ですから、コイツが真犯人だった!というカタルシスもありません。
むしろ「いや、あれはなんだったの?」という謎やら疑問が積もり積もったまま、観る前よりもモヤモヤした状態で鑑賞を終えることになります(笑)。
ですが、その「解き明かされない謎」という強烈なリアリティが、危ないくらいに面白いのです。
そのストイックさがカッコいい。
人物描写は控えめ、と書きましたが、各々のキャラクターは非常に印象的です。
これもまた、徹底的な「多くを語らない」姿勢から生まれた「生きている」人物描写なのか、あるいは単にキャラクター描写が上手いのか…たぶん、両方です。
そしてなにより、キャストが完璧にハマっている、というのがあります。
ジェイク・ギレンホール、ロバート・ダウニーJr.、マーク・ラファロ、この三人のハマりっぷりは、もう立っているだけでキャラが見えるくらい、驚異的です。スゴい。
そして映像。どうやったらこんなに綺麗で整理された構図、色調が作れるのでしょうか。物語のシンプルさのおかげで、フィンチャー監督の映像センスがはっきりと見えます。天才です。
とにかく2時間半、一切の無駄のない最高品質のサスペンスです。
たった一本の糸を伝って、深い闇へと嵌っていく、あの背徳感、ゾクゾク感。それは最高の快感であって、まさしく「サスペンス」の本質。
そして「サスペンスとしての純粋さ」は、そんな観客の心を鏡のように映し出します。ゾディアック事件とは一体なんだったのか…飾りがないからこそ、そういうものまで見えてくるのです。
謎は、解き明かされないから美しい。
…と、思います。
カワサキ

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