Omizu

特別な一日のOmizuのレビュー・感想・評価

特別な一日(1977年製作の映画)
3.9
【第50回アカデミー賞 主演男優賞、外国語映画賞ノミネート】
『ラ・ファミリア』などの名匠エットレ・スコーラ監督作品。ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニが主演を務め、アカデミー賞では主演男優賞と外国語映画賞にノミネートされた。カンヌ映画祭コンペでプレミアされ、ゴールデングローブ賞とセザール賞の外国映画賞を受賞している。

これはとてもいい作品。ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニの二大スターがとにかく絶品。第二次世界大戦前、ムッソリーニが政権を握りヒトラーがイタリアに来たという不穏な空気の中で描かれる静かな演出も素晴らしい。

ほぼ全ての住人がファシスト集会に出向き空になったアパートメントのがらんとした舞台だてがまず秀逸。戦争前夜の不穏さを醸し出すと共に、ある種の寓話であるような捉え方もできる。

人妻で体制に洗脳されている主婦アントニエッタ、仕事を奪われ遺書を書いているガブリエーレは鳥が逃げたことをきっかけに親密になっていく。ガブリエーレはなぜラジオキャスターをクビになったのか、なぜ管理人に嫌われているのか、それが段々と分かってくる。

ガブリエーレは正しい者や弱い者が虐げられる社会のゆがみを象徴するようなキャラクターだ。ガブリエーレの結末、そして何の変哲もない主婦として生きてきたアントニエッタも彼と向き合うことで、その日は「特別な一日」となった。

徐々にガブリエーレの真実が明らかになり、そして二人の距離も近くなる。しかし終盤ある事実が明かされる。その構成もスマートな演出も素晴らしい。倦怠期の女をリアルに演じたソフィア・ローレン、秘密を抱える気弱な男を繊細に演じたマルチェロ・マストロヤンニ、どちらも名演。とてもいい作品だった。
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