辰巳

俺たちに明日はないの辰巳のレビュー・感想・評価

俺たちに明日はない(1967年製作の映画)
3.7
久しぶりに鑑賞。
これはトリュフォー監督が撮る可能性もあったので、そっちver.もみたかったと思うものの、アメリカンニューシネマとしてアメリカ映画の分岐点となった本作はやはり名作であり、傑作であると思う。

ラストシーンは有名だが、それ以外でとんでもないシーンだと感じるシーンはいくつかある。

フェイ・ダナウェイ演じるボニーが、母親のことを考え葛藤の中で一味を離れ1人麦畑?を歩くシーン。そこにクライドが追いかけて引き止めるのだが、ここは凄い!
二人の姿を俯瞰でとらえたショットに雲が地上に影を落としながら移動していき2人をつつむように、被る。この幻想的で未来を不安視しているような美しく切ない奇跡のようなショットは、凄すぎて息がつまりそうになる。当時の技術でどうとったのだろう?!雲の流れ待ちしただろうか笑

【ちなみに、「ドライブマイカー」「悪は存在しない」の濱口竜介監督の「寝ても覚めても」においても、ラスト近くでかなり似た超俯瞰ショットによる雲の影が覆われていくシーンがあったのだが、オマージュであろうか?全く違ったらごめんなさい。これも素晴らしいシーンだと思った。】

あとは、ファーストシーンはかなり見事だと思った。
唇のアップ→鏡で確認→ベッドに横たわる(かなり奇妙なカット割)→ベットフレームを無意味に憎しみを込めて叩く
そこから窓の下にいる車を盗もうとしているクライドを見つけるシーンは最高の始まり方。
たったこれだけで、ボニーの毎日への退屈で不満、鬱憤が溜まっている事を見事に説明していて、フェイ・ダナウェイの美しさもあいまってドキドキとしながら没入させられるファーストシーンとなっている。

アメリカ映画の分岐点となった本作品は、久しぶりの鑑賞でも、やはりその力を見せつけてくれたように感じました。
辰巳

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