ヨダセアSeaYoda

俺たちに明日はないのヨダセアSeaYodaのレビュー・感想・評価

俺たちに明日はない(1967年製作の映画)
4.4
『KIDDO』でモロに言及されるので学生時代以来久々の鑑賞。

1960年代の映画史に燦然と輝く傑作。この作品は、危険な犯罪逃走劇にこそスリルと生き甲斐を見出す男女を描いた、クライムロードムービーの金字塔といえる。「ボニーとクライド」という名前は、リスキーなバディ関係を象徴する代名詞として、後の数々の映像作品にも影響を与えている。

物語の冒頭から漂う緊張感と魅力が、この映画の本質を見事に表している。クライド役のウォーレン・ベイティは、ボニー役のフェイ・ダナウェイが演じる「ただの美人ウェイトレス」として退屈な日常を送る女性の内面を鋭く言い当て、彼女の心の奥底に潜むスリルへの渇望を見抜く。そんなクライドは、退屈な日常からの脱出を求めるボニーにとって魅力的な存在だ。しかし彼自身にも弱さがあり、時折見せる子犬のような悲しげな表情に、観客は思わず共感してしまう。

バイオレンスやクライムを描いた作品は時に「犯罪や暴力を助長する」と批判されることもあるが、自分はむしろ逆の視点を大切にしたい。今作が感じさせるのは、映画だからこそ体験できる「安全な逃避行」の価値。私たちは日常の抑圧や退屈から解放され、スクリーンを通じてノーリスクで非日常の世界へとダイブできる。それこそが映画の持つ独特の魅力ではないだろうか。今作に関してはそのリスキーな恐ろしさや"後悔先に立たず"も描かれているし。

本作のサウンドトラックも印象的。陽気に鳴り響くスピーディーなカントリー音楽が、物語の空気感を絶妙に演出している。これらすべての要素が融合し、今作は単なるクライム映画を超えた、映画芸術としてのクールさと偉大さを感じさせる傑作となっている。

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観た回数:2回
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