零

回路の零のネタバレレビュー・内容・結末

回路(2000年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

漠然と被う怖れのうちに人々が生と死の境界を越えていく。主要人物である川島亮介の根拠のない希望と慰めも象徴的だが、生きるためか?死から逃れるためか?関係への渇望か或いは逃避か?誰もが動機も目的も漠然としたまま。故に自己喪失への怖れは虚ろに揺らぐ「影」に、存在の痕跡に後悔のように遺棄される「染み」となる。
作品公開から二十年以上経つ今日でも普遍的な現実。
だが、悼みがなければ希望もない。

「孤独」とは誰にも理解されない苦しみを抱えている状態である。孤独の檻は有り触れた「赤いテープ」で象られるが、「助けて」と繰り返し乞うのは眼には見えない痛み哀しみという根源的感覚への繋がり。

こうして省みると、その共感の鍵を自ら棘で被い閉ざし、心を背けていることに気付く。
評価が上がることはあっても下がることはないであろう作品。

2024年1月30日に再び放送予定あり。
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