つるみん

吸血鬼のつるみんのレビュー・感想・評価

吸血鬼(1932年製作の映画)
4.0
ドライヤー監督の代表作の一つ。
光と影を巧みに使った演出はまさに怪奇幻想を美しく魅せる事に成功しています。

「吸血鬼」といえど血が出たりなどの派手な演出がないのに驚きますがドライヤー監督が繰り広げる独特な幻想的世界が非常に恐怖を感じます。
光と影、独特な世界観、ドイツ映画という要素は〝カリガリ博士〟を思い出しますが非常に本作はそれに近いものだと思います。(デンマーク映画ではありません)

ドライヤー監督の特徴というとやはり長回しのシーンが多いこと。それは代表作〝裁かるるジャンヌ〟などでも見られます。
視覚的恐怖。サイレント映画に限りなく近い作品であり台詞は最小限に抑えられているが本作にとってはその点が逆に恐怖を与えているように思えます。登場人物の情報もほぼ無く感情移入させない演出。完全に第三者の立場として本作を見る事に意味があります。

棺桶のシーンは「今、見てはいけないものを見てしまっている」という感覚になります。そして劇中1番〝動〟があるラストにカタルシスを味わう事が出来ます。

芸術作品とはこういう事だ。
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