無影

A.I.の無影のレビュー・感想・評価

A.I.(2001年製作の映画)
4.2
キューブリックマラソンの総締めとして鑑賞。『2001年』に並ぶ傑作とまではいかなかったですが、とても面白かったです。
本作の良いところは、人造人間を安易に心をもたない恐怖の対象にしていないところですね。人に愛をもたらすために作られたデイビット。彼はプログラムに刻まれた愛し方しか分からず、それがかえって母の愛を遠ざけてしまう。そんな描写が何とも辛かったですね。そして、人を愛するよう設計しておきながら、その「愛」を遠ざけようとする人間の業の深さをえぐり出すというのは、とてもキューブリックらしいといえるでしょうか。彼はそれを追求したくて、この作品を作ろうとしたのかもしれません。
物語の終盤は、どちらかというとスピルバーグな風味がしました。大衆迎合的というと少々的を射ていないような気もしますが、キューブリック的哲学の世界が希釈されて、誰にもしみ渡るようなエモーショナルな世界観になっていたと思います。個人的にはそんなラストも嫌いではありませんが、キューブリックが監督していたら(元々、生きていてもスピルバーグに監督させる気だったというので、何らかの形でこの作品に関わっていたら)、どんなラストを迎えさせたのか、見たかった気もします。
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