こまち

旅立ちの時のこまちのレビュー・感想・評価

旅立ちの時(1988年製作の映画)
4.3
指名手配中の両親と共に、幼い頃から髪型や名前まで変えて各地を転々とする日々。

そんな中でも、子供たちは抜け出したり反抗したりすることなく、むしろ普段から子供が率先して家事をやるほどで家族の本物の愛を感じた。
両親も本当はこんなことにしたくなかっただろうけど。なんで子供を持った先を考えなかったのかとかは置いておこう…

主人公のダニーは家族を大切に思うあまり、大好きなピアノも好きな人との恋も諦めてしまっている。
いくら大事な家族とはいえ、他の多くの家族とは異なった環境にずっと疑いを持たずにいるべきなのか、、両親や家族との関係はある人、ある時によっては支えにもなるししがらみにもなる。
リヴァーフェニックスの生い立ちを思うと余計に重ねて見てしまう。それもあってなのか、やっぱり複雑な表情に10代とは思えない味がある。


私もコロナ禍になって、母と姉が高リスクなため家族以外とできる限り関わらないように生活していて数少ない友達とも疎遠になりかけている真っ只中で、勝手ながらダニーの境遇に共感を覚えてしまった…
でも大好きな家族だから邪魔だとか全く思わないしずっと一緒にいたいし、むしろ恨んでも仕方ない環境とか世界に怒りの矛先を向けている。ダニーの両親が反戦活動の最中でたまたま事件になってしまったことも思うと、ダニーも不条理な世界を憎むこともあったのかなと思ったり…私と違って愚痴を言わず現状を受け入れて向き合ってるのが偉すぎる。


そして、弟くんがいつも明るく話すのが可愛らしかった…家族を楽しませようと気を遣ってることもあるんだろうなと思うと胸が痛くなった。

原題のrunning on emptyを直訳したら空っぽのまま走り続ける、あるいは空っぽでも走り続けるってことなのか…?何にせよ、彼らの人生を空っぽなんて言わないでほしいし、空っぽとは言わせない何かを持って生き続けてほしい、生き続けるだろうと思わせられる作品だった。
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