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真夜中の虹のSPNminacoのレビュー・感想・評価

真夜中の虹(1988年製作の映画)
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失業してもキャデラック・コンパーチブルがある。絶望しても愛がある。無愛想でも優しさがある。笑わなくても可笑しみがある。冴えない男女に美学がある。真夜中に虹がある。良いも悪いも有るも無いも矛盾してる。それがカウリスマキ映画。
ボギーのように気障な言葉を交わす男女、革ジャンを羽織る小さな坊主もハードボイルド。監房で相棒(マッティ・ペロンパー!)と出会ってから、アウトローに転じて往年のノワール映画クリシェをゆく展開は、ラジオから流れるR&Rと共に活き活きと輝き出す。
無駄を削ぎ落とした映画の美学の中で、一度だけ笑顔を見せる瞬間、ゆっくりと幌が上がる瞬間に不敵な大胆さがある。大人しくやられてばかり、失ってばかりでいられるかと。そこがロックだ。でも目指すものは虹の彼方。ああ、Over The Rainbowフィンランド語ヴァージョン!
どうしようもなくツイてない、希望はない…でも、持たざる者同士が分かち合う小さな喜びと誇りがあるから人生捨てたもんじゃない。前提となる状況はダメだけど、人のあり方としては理想。今の時代には尚更、カウリスマキの哀しくて滑稽な寓話が現実を照らすように思える。
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