明石です

恋のためらい/フランキーとジョニーの明石ですのレビュー・感想・評価

5.0
アルパチーノとミシェル・ファイファーの『スカーフェイス』コンビが紡ぐ大人のラブコメディ。一言でいえば、デニーロとジェーン・フォンダの『アイリスへの手紙』を豪華キャストの布陣そのまま横にずらしたような作風なのだけど、これがトンデモなく面白い。NYの寂れたダイナーで働く中年の男女が、現実の厳しさに揉まれながら紡ぐストーリーに、洒落た台詞に年季と気合の入りまくったご両人の演技。早くも2023年に見た映画のベスト10入りしそう。少なくとも私的アルパチーノ映画のベストの1作に数えても嘘はなさそう。

個人的にミシェル・ファイファーは本作のような疲れた役柄が好きだなあ。本人が聞いたら怒るだろうけど、皺にとっても色気があるのです。『スカーフェイス』で緑のドレスにつるりとした背中を全開にしてブイブイいわせてた頃よりさらに美しいと思う。そして言わずもがな、いつでも全盛期なアルパチーノは五十路を過ぎてなお色気を増してますね。ちょっと昔の若造りしてた頃(40歳で20代後半の役を演じてた『クルージング』とか)よりカッコ良くなってるのずるい笑。お顔が徹夜明けのブラックコーヒーみたいに濃いから、皺が増えるとかえって自然な魅力が増すのかな。

そしてこの映画、画作りもまた上手くて、TVの前でまどろんでる猫を映した後、横にカメラがスライドし、愛を交わし合ってる男女が映る短いショットとか、キスしてる2人の後ろで花屋がトラック開けて後ろに積んでる花が画面を彩るシーンとか、細かいところにやけに手が込んでて好き。誰が撮ったんだろう、と思ったらゲイリーマーシャル!!知らずに見てた笑。しかも『プリティウーマン』の次作なんですね。彼のフィルモグラフィではそこまで有名な作品じゃないみたいだけど、個人的には激推ししたい1作です。ついでに言うと脚本も素晴らしくて、例えばアルパチーノ扮するナイスガイが、ヒロインの歳(35歳)を聞かされた直後「サソリ座か」と返すところとか、彼がもともと刑務所に入ってたことを聞いたヒロインが、直後に「そこでたくさん読んだのね」と返すところとか。都度都度気が利いてて小憎らしい。素敵な映画なんだよな、、

——好きな台詞
「彼女は独りきりだったんだろう?胸をときめかす夢もなく、毎夜人知れずウィスキー飲まずにはいられなかった」
「ウォッカよ。あなた、コック辞めて水晶占いでもやったら?」
明石です

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