イトウモ

WANDA/ワンダのイトウモのレビュー・感想・評価

WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)
5.0
しぬほどおもしろい

仕事も家族もお金もなくなった女が迷い込んだ映画館の暗闇で最後に財布をなくし、強盗と出会う。

「男性とか女性とか以前にただの人として相手と向き合う」という人付き合いはただのきれいごとで、そういうことを言う男性はいかに女性が「女性として」しか普段見られていないか、という言葉を以前に女性からかけられたことを思い出す。

自分の持ち物のだと思えるもの全てただ相手からどう見られるか、というだけの問題だとすればすのすべてを開巻ものの15分ほどの短いシークエンスで失うワンダは映画館に迷い込み、不思議の国のアリスの如く犯罪者との逃避行に巻き込まれる。
昼間の社会にある「属性」を全て失った彼女は、映画館というラビットホールからあちらの世界に行ってしまうのだ。
あちらの世界、彼女の地獄めぐりが犯罪者との逃避行であるのは、ナチュラルボーンキラーズでもなく、ボニーとクライドでもなく、勝手にしやがれでもなく、『夜の人々』を思い起こさせる。
『夜の人々』であるはずの二人の逃避行が、真っ白な昼間の出来事として描かれることにこの映画のゴージャスさがある。これは「白いフィルム・ノワール」にほかならない