HidekiIshimoto

ヴィタールのHidekiIshimotoのレビュー・感想・評価

ヴィタール(2004年製作の映画)
4.5
塚本映画観直しウィークの山場。厨二病大噴火みたいな『鉄男』から15年後に、塚本晋也がこんな愛と死の深淵映画を撮るとは誰も想像しなかったと思う。やっぱり変態性強いんだけど、なんだか変態性の概念を塗り替えられた気分。変態の底にあるのはたぶん愛と死なんだろう。どうやら都市化するほどにこじれてくるのが愛と死の問題で、変態とはそのこじれ模様。都市人の大半は変態ってことだ。沖縄ロケで撮られた胸が軋むような美しい楽園煉獄シーン。沖縄のああいう誰もいない岸辺へは俺も何度も行った。そしてあんなふうに座って、確かにあんなふうに生の向こうの景色のように見ていたと思う。生の輝き溢れる景色の中で死への憧れに触れていた気もする。あの海はそういう海だったといま強く思う。ついでに恥じらい捨てて言えば、愛とは何?を人生のメイン課題のつもりでよちよち生きてきた。けどこれ観直して愛とは死からやっと始まるものかって気分。そんな愛を表現できる役者として浅野忠信のほかに誰がいるかって気分。ちょっと魂か何かがこじれちゃった気分。このたった86分の映画の中を生きぬいた気分。