半兵衛

書を捨てよ町へ出ようの半兵衛のレビュー・感想・評価

書を捨てよ町へ出よう(1971年製作の映画)
3.5
寺山修司は詩や演劇など多彩な分野でその個性を発揮したマルチな作家(個人的には競馬にロマンを与えた作家のイメージが強い)だが、そんな彼のアングラでクレイジーな作風を存分に発揮しているのが長編デビュー作品となった本作。劇映画の劇を否定し、コンプレックスを持つ青年の行き場のない状況を自由闊達な語り口と斬新な演出で新たな架空の世界に仕立ててしまう手腕はまさに寺山テイスト。そしてグリーンの映像が主人公の最下層にいる家族の生活を非日常へ変貌させてしまう奇跡。

でも半世紀たった今となっては学生運動のあった時代の空気が強くて時代の刻印を鑑賞している気分が強くなっているのも事実。あと青森出身の主人公を通して寺山修司のコンプレックスや青春への想いが取り留めもなく延々と映像で語られているので少し飽きが来たりも、そう考えると映画という形もだいぶ変化してしまったんだな。

若い頃の平泉成が体育会系の青年を演じているが、ガタイがいいので結構ハマっている。そしてワキ毛を気にする美輪明宏や、寺山好みの女性を体現する娼婦役の新高恵子(ちなみに彼女も青森出身で、津軽訛りの主人公と喋っているときちょっと訛りが出ている)のインパクト。

J・A・シーザー作曲による叫ぶような、でもそれがどこか心地よい歌の数々も耳に残る。
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