都部

激突!の都部のレビュー・感想・評価

激突!(1971年製作の映画)
4.1
荒野にて車を走らせるセールスマン、たった数度の追い越しによって彼は巨大トラックに付け狙われることとなる……弱冠25歳のスピルバーグ監督の長編デビュー作。

背後から迫ってくるトラックに追い回されるというシンプルな題材ながら、緊迫.不穏.臨場感を際限以上に与える洗練されたカメラワークの連続と張り詰めた緊張感の持続の為の緩急の組み方がべらぼうに上手く、不条理なシチュエーションパニックムービーとしての完成度が非常に高い。

自分よりも力を帯びた巨大な存在の追跡という時代を選ばない普遍的な恐怖を題材として選んでいるセンスの良さもそうですが、安易にトラックの運転手を猟奇的な存在として描かずに極めて無機質な不気味な存在として配置してるのが巧みですね。この辺り、ホラー映画にも共通する文脈としてある『正体不明』であるが故の恐怖を思い出す作りで、一貫して背景を描写しないのが本作のソリッドな印象を更にスマートにしています。中間に位置するバーカウンターでの心理戦も正にスリルのお手本のような空気感で、デビュー作からこれを撮れる監督は大成して然るべき過ぎますね……。
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