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早春のsilkのレビュー・感想・評価

早春(1970年製作の映画)
5.0
(アホみたいに長文かつ駄文です)

とにかく主人公二人が素晴らしすぎる………。

マイク役のジョン・モルダー=ブラウンは、クラクラしてしまうような、文句のつけようのない美少年なのだが、同時に純真無垢な雰囲気とおどおどとした雰囲気をもっている。
監督イエジー・スコリモフスキは、彼のこの雰囲気が決め手となり、100人ほどの主演候補者の中から彼を選んだと語っている。
美少年好きを自負している私でも、ここまで汚れのない、世の中の悪い事を何にも知らなさそうな純真無垢な美少年を見たのは初めてだ。

そんな何の汚れも知らない15歳のマイクが、環境のせいで年相応に成長していく事ができなかったのは何とも悲しい。
15歳で学校を中退して労働している時点で問題大アリなのだが、マイクにセクハラしたり性的な目でマイクを見たりする客が普通にいて、健全な労働環境じゃない。
そしてスーザンのストーキングを始めてからは、成人映画や風俗店など、意図せずして大人の世界を体験する事になるのだ。
そもそもこの映画は、子供と大人の狭間を揺らぐマイクが、容赦なく大人の(しかも不健全な)世界にブチ込まれる話だ、と私は解釈している。

もしマイクが普通に学校に通って普通の思春期を送っていたなら、同年代の女の子と健全に恋愛をし、普通に成長できていたはずである。(イケメンだしいい子だし) 彼が自分の性的欲求を抑えられずこんなにも変態化してしまったのは、スーザンも含めた周りの大人達の責任だと言わざるを得ない。本作は童貞映画の金字塔などと言われていて、マイクが暴走したのは彼が恋愛経験の少ない童貞だからだという捉え方が一般的な様だけど、うーん…そうなのかな?と思った。

そしてラストシーン。スーザンを手に入れようとして自分で仕掛けた取引で、たしかに自分の思惑通りにはなったけど、結局スーザンを本当の意味で手に入れる事はできない。
それに気付いてしまったと同時に、マイクの真っ直ぐさと純粋さが傷つけられて粉々になった結果の惨劇だと私は思う。

自分でも何を言っているのかよく分からなくなってきたので、とりあえずマイクの短パン姿はいいぞと言っておく。(こういうのがダメ)

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さて、もう一人の主役はスーザンである。
彼女は綺麗な赤毛が目を引くド美人なのだが、女優のジェーン・アッシャーはポールマッカートニーの元カノらしい。

このスーザン、とにかくマイクを手のひらで転がしまくる。しかもただ弄ぶだけでなく、なんならちょっと楽しそう(笑) マイク可愛いもんね…その気持ち分かるよ…。
スーザンがマイクを子供扱いしてからかっているシーンだけで、私は多幸感で胸がいっぱいになってしまう。(困ったもんだ…)
スーザンがマイクを弄ぶこういった行動こそが、マイクを超絶変態化させた大きな原因なんだけどね…。

スーザンは公衆浴場にやって来る客にサービスをする事など何とも思っていない様子だし、ストリップでバイトするくらいだから、性的に消費される事に慣れているのだろう。
そんな彼女だから、マイクの取引にのる事など取るに足らない事だったに違いない。マイクにとっては初めてで一大事でも、スーザンにとっては客にサービスするのと大して変わらぬ事。マイクの悲痛な思いが手にとる様に分かるよ…。

とはいえ、スーザンも幼い頃から嫌な経験を沢山して、こういうスレた女性になってしまったのかなと思う。彼女は明るくて魅力的だけど、言動を鑑みても自分を大切にしている様には到底見えない。

全編を通して爽やかなテイストの本作だが、主人公二人のバックグラウンドを想像すればするほど悲しい気持ちになる。(でも好き。)

(2019年2月初鑑賞)
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