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ドラえもん のび太と竜の騎士の都部のレビュー・感想・評価

3.2
ひみつ道具〇×占いにより作中で発生する『現代の地上には恐竜が実在していない──はずなのに、目の前で恐竜と思わしき存在が跋扈している』という矛盾した状況の謎を幕開けとして、スネ夫の失踪からシームレスな展開の連続と布石/伏線回収が丹寧な一作で、脚本に関して言えばドラ映画の中でも安定したそれなのではないかと思える。

見えないはずの物が自分にだけ見えてしまう──そんな状況に陥ったスネ夫が『ノイローゼ』であると主張するのは時代を感じさせるが、道具による存在の否定を客観的な視点として挟んでるのが面白いなと。では道具の故障かといえばそんなことはなく、筋の通る回答を示した上でスケール感を拡張した物語が改めて始めるのは『ドラえもん』というSF作品の懐の広さを感じ入る。

不法入国者として地底王国に足を踏み入れるパートがもう少し欲しかったが、今回に関しては勝手に侵入したドラえもん組に問題があってぐうの音も出ない正論で説き伏せられている姿が妙に記憶に残った。

信頼を裏切ることは最大の罪だぞ!

結果論的には正しかったのだが、近寄るなと言われてる建物に近寄ってあまつさえ中に入るのび太くんはさぁ……。物語の転換点であるこの聞き耳のシーンから巨大国家の陰謀が明らかとなり、舟の正体が……であると明かされるシーンも言いたいことはあるが面白い。そこから攻防に転じるかと思いきや、歴史の在り方を目にするという形で和解に転じるのは他のドラ映画にはない帰結で、派手派手しさはないものの収まりの良さは随一なのではと思った。

余談として地底人のデザインが生理的に嫌悪感を感じるそれで、竜の騎士の妹であるローが作中で『可愛い』『綺麗』とドラえもん男衆に言われているのを見て、『いや、全然可愛くない……気持ち悪い』となってしまった自分を若干恥じた。初対面のシーンでのび太がデレてるの見て、不機嫌になってるしずかちゃんは可愛いと思います。
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