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肉体の冠のbennoのレビュー・感想・評価

肉体の冠(1951年製作の映画)
4.0
ジャック・ベッケル監督作品…2作品目

実際の事件に基づき、男の友情や女の情愛を詰め込んだフレンチ・ノワール


パリ郊外で舟遊びに興じる男女たち…光溢れる川、空と木立の瑞々しく牧歌的な画に朗らかな歌声…ルノワール監督作品の助監督を務めてきたベッケルならではのプレリュード

彼らは賑やかな笑い声と共に屋外ダンスホールに雪崩れ込み…享楽的にダンスに耽ります。

その中でひときわ目を引くのが娼婦マリー(シモーヌ・シニョレ)…ダンスでクルクル回るシーンでのとても艶っぽくてエロい視線…その先にいたのは大工職人のマンダ(セルジュ・レジアニ)

ふたりはお互いに一目惚れ…しかしマリーの情夫はギャングのロラン…彼女を賭けた決闘でマンダはロランを殺害してしまいます。

街を出るマンダと後を追うマリーでしたが…ギャングの親分ルカはマンダに罠を仕掛けます。



今作の最大の魅力はマリーを演じたシモーヌ・シニョレ…娼婦という役柄で凛々しさや女性としての逞しさを上手く表現します…男女問わずビンタのシーンがとても多く、勿論シモーヌも叩き叩かれ…凄まじいです。

ただ好きな男性の前では少女のような可憐さ…髪を下ろした姿はどことなくあどけなさも感じます。

川辺で昼寝をしているマンダのもとへやって来たマリー…陽光に照らされ垂れ目が可愛らしい笑顔…やはりこの頃のシモーヌはどことなくロミー・シュナイダーによく似てます。

ひとときの二人の生活…淹れたての朝のコーヒーが幸福感たっぷり…

原題は《Casque d’or》(黄金の兜)…当時女性で帽子を被らないのは召使いと娼婦だけのよう…娼婦であるマリーのブロンドの髪型が兜のように見え、それが彼女のニックネームに…


しかし…ふたりの幸せな生活は長くは続きませんでした。


終盤は怒涛の勢いで物語が展開… 《さくらんぼの実る頃》という切ないメロディに激しく心が震えます。


そして…大事なところは観せず…写実の背後をしっかり想像させるところは好みのエンディング…ෆ*
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