まるでドキュメンタリーを見ているような錯覚に陥る。登場人物たちがちゃんと呼吸をして生きてきた人たちなのだと思えて仕方がない。
音響のせいなのか、誰か一人の声や出す音を大袈裟に鳴らしている感じがしなくて、どの登場人物も主人公であり脇役であるような作り方がされているように感じた。望月の過去に繋がった時、初めて「あ、これは映画なんだな」と認識できた気がする。
人生の大切な記憶を一つ選ぶ、ということを記憶の再現映像を撮るという形で表現しているのがすごい。
是枝監督にとって、映画を撮ることは人生の大切な記憶を選ぶことに似ているのだろうか。だとしたら映画を観ている私たちは、誰かの大切な記憶を覗いているのかもしれないと思った。
しおりが雪を投げたり蹴ったりと暴れているシーンがすごくよかった。自分が映画監督なら、あんな映像が撮れたらあまりに嬉しくて頬が緩んでしまうと思う。
最近は綺麗な映像ばかり見ていたから、映像の粒の粗さがあたたかくて淋しく思えた。良かったな。