ヴぇる

オリバー!のヴぇるのレビュー・感想・評価

オリバー!(1968年製作の映画)
3.2
1969年のオスカーを獲得した作品だが、この年は対抗馬が特にないためイギリス映画である今作が獲得出来たと評されている。それでもミュージカル映画の古典作品としては学ぶ所はまだまだ多い名作だ。

実際1969年に作られたとは思えないほど色彩や映像は古く、30年代や40年代の作品にすら見える程で、白黒映画にした方が映えそうな場面は沢山あった。この3年前である1966年に「サウンド・オブ・ミュージック」の美しさがなお極まってしまう印象だ。

だが、BGMの音の多さは確かに豪華で美しいし、劇中の広さは驚くほどだ。引きで撮っても接写にしても奥行きを感じられる。
特筆すべきはエキストラの素晴らしい演技だろう。わざとらしさは一切なく全ての人々が生き生きと輝いている。
20分経っただろうか?と時計を確認したら50分経っていた事には心底驚いた。
全てがノれる訳ではないが曲は多彩だ。1曲毎の尺が少し長いのは気になるところだが。

しかし殆どの人間が評している様に、主役のオリバーがミュージカル向きでないというのは頷く以上に笑ってしまう。
彼には悲しみを増大させる歌や哀歌が相応しい。今作には向かなかったのだろう。

正直いって登場人物の殆どが真っ当な人間でないため感情移入は出来ず若干イライラする。そういう意味では、ピノキオの様な印象を受けたが、小説ではオリバーのが先であり映像作品ではピノキオの方が先なので、難しい所か。

総評としては、チャプター毎に評価が上下する映画だ。さっきまで最高だと思っていた途端にクソになる。
子供向きとは言えず、かと言って大人向けかと言われれば違う。
イマイチターゲットが分からない映画だが愛されている。これがこの映画の評価なのだと思う。素晴らしい点も酷い点も混在している映画それがオリバーだ。
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