何という充実感!
監督の自伝的要素とか、今までの集大成とかはさておき、ベルイマンの人間讃歌だった!観終わって多幸感に包まれました。
5時間超えだけど5部に章立てされていて観やすく、2部ぐらいまでは冗長かなと思いきや、その後からぐんぐん惹きつけられた。これを観たらベルイマンの他作も理解しやすいかも。
ある演劇一家の2年間。劇場主である父が亡くなり母は町の主教と再婚する…息子アレクサンデルの目線で描かれる物語。
プロローグの映像から惹きつけられました。白夜の北欧、心を映すような色彩表現、幽霊や幻想的な映像などニクヴィストの撮影により視覚的に隅々まで飽きさせない。そして、真っ直ぐなアレクサンドルの瞳。
劇中劇あり、怪奇あり、愛憎あり、家族愛あり、禁忌あり、サスペンスあり、お伽話あり…いろんな要素に、過去の自作の数々を散りばめた、これぞ“ベルイマン全部盛り”。映画表現の見本のよう。
特に主教の家を脱出し、イサクおじさんの家でのエピソードが印象的だった。怪しげな人形の部屋、イサクの話を聞いている時の幻想、中性的なイスマエルとの悪魔と一体化したような瞬間、幸福感の中で突如として亡霊が出現するエピローグ…
この作品が最後と言っていたけど(実際そうではない)今作を作ることで父との確執や憎しみは浄化されたのではないかな。いま自伝を読んでいる途中ですが、いくつかは監督の実際のエピソードでした。
悩むより楽しめ。
不幸は常にあるけれど、
この小さな世界を楽しもう!
自己を見つめ悩み続けたマエストロだからこそ辿り着いた明るいメッセージが心に響きます。
「どんなこともあり得る
何でも起こり得る
時間にも空間にも縛られず
想像の力は、色褪せた現実から
美しい模様の布を紡ぎ出すのだ…」
映画監督としての原点にして最終到達点、猛烈に素晴らしかったです!