ちょげみ

ユージュアル・サスペクツのちょげみのレビュー・感想・評価

ユージュアル・サスペクツ(1995年製作の映画)
3.6
【あらすじ】
カルフォニア州サンペドロにて、港に停泊中だった船が突如爆発し27人が死亡するという事故が起こった。
警察は現場の状況からマフィア同士の抗争と断定、生存者である重傷を負ったハンガリー人の男性、そして、ユージュアルサスペクツの一人であるキントから話を聞き出すことに。
警察署にてキントから話を聞く中で、この事件は6週間前に偶然出会った元犯罪者の集団"ユージュアルサスペクツ"による犯行だったことが判明し、彼らを仕向けたのは謎に包まれた裏社会の大物"カイザー・ソゼ"だということも徐々に明らかになっていくのであった。。。。


【感想】
綿密に張り巡らされた伏線、精密に練り込まれた脚本、優れた構成など、クライムサスペンス、ミステリーの映画の中で類を見ない、とても完成度の高い作品になっていたと思います。

大どんでん返しと謳っているので後半はこちらも身構えて画面にのめり込んでいたのですが、それでもラストシーンには大きな衝撃を覚えました。


今作品での大きな特徴として挙げられるのが、大部分が登場人物であるキントの回想によって進められることだ。

この作品は所謂"信頼できない語り手"を巧みに利用することによって読者に不信感と緊迫感、そして映画を見進める推進力を与えている。
(信頼できない語り手とはその言葉の通り、語り手が持っている特徴などにより、話している事柄が客観的事実とはかけ離れているであろう時に使われる表現である。
しかし、そうはいっても、誰でも多かれ少なかれ信頼できない語り手なのだが、一般に信頼できない語り手と定義される語りは、その人物の強い偏見、自己欺瞞、記憶の欠如または改変、知識の欠如、思考の強いクセなどが強く働くという特徴を持っている。)

本作ではキントが語る6週間前から現在までの出来事と、客観的情報として我々に提示された事実(映像)を組み合わせて現実を再構成するよう求められる。
キントが語る断定的な情報と警察内と現場に残られた記録から刑事(?)が推理して、黒幕の"カイザー・ソゼ"の正体を詰めていくという流れである。
しかしそうは問屋が卸さない。真実に辿り着くためにはキントが語る記憶を鵜呑みにしてはならず、語りの中に残る細かな痕跡を嗅ぎ分けて慎重に推理を進めていかなければならない。

実際、刑事がキントを追い詰め追加の情報を聞き出し、パズルのピースがばっちりと埋まるストーリーになっているが、これはキントの巧妙な罠であった。
キントは恐ろしく頭が切れミスリードが上手い。
警察が把握している事実の範囲を正確に認識し、それでいて自身が拵えた毒饅頭を、推理すれば整合性がとれる形で刑事に差し出す。
それも一度にではなく、豪を煮やした刑事がキントを追い詰め、追加の情報を聞き出して初めて完成するトラップというから驚きだ。。。
いくつかの事実とキントが作り上げた幻影で構成されたパズルは"真実"という完成形にはなっておらず、あくまで我々(自分)は刑事と一緒にキントの掌の上で踊らさせることになった。


どこまでが事実でどこまでが嘘か、どれが伏線でどれが見せかけか、誰が信用できて誰が信用できないのか、サスペンス、ミステリーとして円熟した作品であると思います。
ちょげみ

ちょげみ