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コララインとボタンの魔女のEikeのレビュー・感想・評価

コララインとボタンの魔女(2009年製作の映画)
4.0
どこかロアルド・ダールの子供向け物語を彷彿とさせるニール・ゲイマンの原作を「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」のヘンリー・セレックが映画化。
2009年の公開当時、本作の上映時間100分はモーション・ストップアニメ作では歴代最長だったそうです。
本編の撮影に18か月、準備期間として2年間、製作費60億円が費やされている訳で立派な「大作」ですよね。

ストップモーションアニメとしては極めて限定的な舞台設定の作品ではありますが隅々までこだわりが感じられ実に「ゴージャス」。
現実世界と異界をご機嫌斜めの少女コララインの視点から描くタッチも実にスムースで違和感なく物語に没入できます。

デジタル技術もふんだんに導入されていますが、やはりこれは手作り感満載のストップ・モーションアニメの醍醐味を満喫できる作品でしょう。
この完成度の長編作品ともなると世界的に見ても本作のセレック氏とウォーレス&グロミットで知られるイギリスのアードマンプロ、そしてライカスタジオぐらいしか製作能力がないのではないでしょうか。
そう考えると本作の贅沢さもひとしおですね。

しかし本作のユニークさは一応「子供向け」の体裁をとりながらも表現に関しては妥協することなく独自の世界観を打ち出している点にあり。
表層的には少女コララインの不満を背景にした寓話的な物語ではありますが、後半に至る頃にはダーク&ビザールな登場人物たちの紡ぎだす異様な世界に絡め取られるような気分。
はっきり言ってその世界は可愛くないどころか良い子たちには少々刺激が強すぎるんでは、と心配になるほど「ダークかつホラーテイスト」が濃厚。

ただ、自分の幼少時代を思い起こしてみると、「怖い物語」に接した時には内心怯えたりはしましたが、同時に子供心にも未知の物/奇妙な物/不思議な物/不気味な物たちには強力な磁力を覚えたものなのだ。
本作についても確かに少々刺激の強い映像世界ではありますが「恐怖・戦慄」だって立派な感情な訳で、一概に否定的に見るようなことはかえって危険な気がします。
そういう意味で、本作は決して「教育的」とは言えないまでも子どもに見せたくない様な作品にはなっておらず、むしろ大人と子供が共に見るにふさわしい作品だという気がしました。

セレック監督、新作が待たれるところですがようやく今年2022年に"Wendell and Wild”がNetflixで公開予定。
脚本には大注目のJordan Peele監督(声の出演も)が参加しており、期待されます。
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