イルーナ

コララインとボタンの魔女のイルーナのレビュー・感想・評価

コララインとボタンの魔女(2009年製作の映画)
4.3
【Identity V(第五人格)の元ネタ?】

ストップモーションアニメの巨匠・ヘンリー・セリックの代表作。

引っ越した先のアパートにあった、壁紙に隠れた小さなドア。
その先には理想の両親や住人が待っていたが、皆、目がボタンになっていた……

ストップモーションアニメと言うだけで、もう何かが少し動くだけでもワクワクさせられるものがあります。
冒頭の人形を作り直すシーンは、「縫う」「ほどく」といった行為独特の痛みや怖さがひしひしと。
「陰鬱な現世と明るく陽気な異界」という対比は王道ですが、あちらの世界の庭園といいサーカスといい、本当にワクワク。
ネズミのサーカスとか、カメラワークどうなってんの?!と言いたくなるような所があったし……
小さなドアを通って異界へ……のモチーフは指摘してる方も結構多いように、産道でしょうか。
このモチーフは『ジャイアント・ピーチ』でも見られましたが、あちらが「生まれ変わり」なら、こちらは「胎内回帰」か。
たどり着いた異界は何でも願いや理想を叶えてくれる所。だけど、その実態は子供のさびしい心に付け込む魔女の罠そのもの。
目がボタンになるだけですごく不気味になるのは、表情が読めなくなるから。
それだけ「目」って大事なアイコンだということがよく分かる。
ワイビーの口を縫い付けてむりやり笑顔にしていた件は、まさにエゴの押しつけ。
異界をちょっと歩くだけですぐ空白になったり、ゲームをクリアしていくごとに華やかな世界がモノクロ化していく所は、まさに魔女の空疎さを表しているかのようでした。
そして脇を固めるキャラがカッコいいんだよなぁ。
劇団ひとり吹き替えの黒猫はイケボだし、終盤のワイビーの駆けつけ方はヒーローみたいだったぞ……!

ホラーテイストの強いおとぎ話ですが、テーマはまさに王道そのもの。
どうやら私の場合、シンプルな話の方が好みみたいです。

余談ですが、本作のコンセプト・アーティストに日本人のイラストレーター、上杉忠弘氏が参加しているのですが、そのきっかけを作ったのは何と『あの夏のルカ』のエンリコ・カサローザだった!
パンフレットを読み直してたらまさかのその名前が出てきてビックリでした。
そういやあちらのアルベルトも、「主人公にとっての理想を体現するが、相手を少しでも思い通りにできないと豹変し、エゴを押しつけてくるキャラ」だったなぁ……
片や恐怖そのもの、片や全面擁護ムード。同じ性質のキャラでも描き方が違えば印象もガラッと変わるものです。
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