凛葉楓流

ワン・プラス・ワンの凛葉楓流のレビュー・感想・評価

ワン・プラス・ワン(1968年製作の映画)
3.2
結局いつものゴダールじゃねえかよ。
ずーっと謎の本の朗読。ラストも女の流血を伴う死。浜辺。なんとなくメタっぽい映画の撮影クルーたち。確かにカッコいいけどあまりにゴダール過ぎ。
高度に政治的で、極左的な主張にも思えるが、本屋でのナチス敬礼と洗脳じみた朗読、横溢するポルノマガジンなんかは皮肉のつもりなのか、マルコム信者の黒人たちに凌辱され殺される白人女性なんかも、「YES」しか答えさせないインタビューも、なにか反語的な意味があるのかもしれないが、表層だけじゃないのだと言い逃れできそうな、こういうゴダール臭さが苦手。

で、肝心のストーンズのレコーディングなのだけど、まだリハというか曲の試作段階。マジでビル・ワイマンが何もしてないし、ブライアンのギター全く聞こえないし、最期の方には登場すらしないし……
じゃあ彼らの実体に迫ったものかと言えばそうでもなく、仕切りの向こうにいる無数のスーツ姿の”大人”たちや、芝居くさいカメラの動きと撮影者を一瞥もしないメンバーたちには違和感がある。
あと、全体をみれば「悪魔を憐れむ歌」よりも「ストリート・ファイティング・マン」のほうが政治的だし、本作の趣旨に合っていたのでは?
凛葉楓流

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