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ワン・プラス・ワンのSariのレビュー・感想・評価

ワン・プラス・ワン(1968年製作の映画)
3.5
1994/?VHS
ゴダールが唯一撮ったロック・バンドThe Rolling Stonesのドキュメンタリー。
所持していた海外版でしか観たことがないため、日本語字幕版で観なければと思いながらも、晩年のBrian Jonesを見ると何とも言えない気持ちになる作品でもある。

■〈2021年8月24日。R.I.P. Charlie Watts〉

今年8月24日に80歳で逝去したチャーリー・ワッツ追悼緊急上映。
かつて所持していた海外版VHSでしか観たことがなく、日本語字幕付きも初めてで、劇場の音響もよく臨場感があり観に行って良かった。

本作は五月革命の後、ゴダールがローリング・ストーンズのレコーディング風景を撮影したドキュメンタリーと、時代の政治思想を反映したブレヒト的野外劇という全く異なる音と映像の並置から成り立つ。
ローリング・ストーンズがシングル「悪魔を憐れむ歌」をスタジオで練習する長回しによる風景、そこに強引に差し込まれるのは、ブラック・パワーで黒人のゲリラ戦を描く寸劇とアジ演説、ポルノショップでアメリカ人捕虜を前に長々と朗読されるヒトラーの「わが闘争」。また、当時のゴダールのミューズであったアンヌ・ヴィアゼムスキー扮する革命家ヒロイン、イヴ・デモクラシー嬢が、インタビュアーの空疎な答えに終始する。
最後に、赤旗・黒旗に取り囲まれるなかを、ハリウッドの象徴であるイヴを乗せたクレーンが上昇するといったものだ。
暴力的なまでの表現と色彩センスに今も圧倒される。本作の公開日、12月3日はゴダール91歳の誕生日である。

私はストーンズの来日公演でバックステージに招待され、メンバーと集合写真を撮ってもらったという過去がある。
開演前の僅か5分にも満たない一瞬の出来事だったのだが、だからこそ、あの時の瞬間が脳裏に焼き付けている。私はチャーリー・ワッツに話しかけて単純な会話までした。
夢のような体験だった。
常にその英国紳士の上品な佇まいに敬意と、追悼の念を込めて。

私が産まれた時にはブライアン・ジョーンズは、既にこの世に居なかったが、この映画の撮影時のようにバンドの主導権を失っても、やはり彼にはカリスマ性がある。
若き彼らの姿を目に焼き付けた。

2021/12/23 ミッドランドスクエアシネマ2
2021-352
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